タイトル

日本初のレーシック

科学を悪い方向へ使うというのは、科学者の責任ではないんじゃないかと考えているんです。
そして科学そのものも罪でもないわけですね。
科学そのものの罪でもないですね。
もう少し言いますと、私は科学するということは、それこそ人間の脳の本質的な属性だと思うんです。
脳というのは知らないことがあったときに、知らないと我慢できない、そのこと自体が脳に備わった重要な性質なんです。
とくに高等動物である人間に特徴的な性質だと思います。
たとえばご二人の大が集まって、二人の大があることを知っていて三人目が教えてもらえないときに、その大はやはり知りたいと思うわけです。
それはなぜ思うかというと、それこそ宇宙の原理から芸能界のゴシップにいたるまで、知らないことをみんな知りたがるわけです。
それは人間の脳がそういうふうにできているから。
科学というのはそういう知らないことを知ろうとする活動なんですよ。
だからこれを抑えることはできないと思います。
抑えるということは人間が人間でなくなる、ということですから。
だから、私は人間が存在する限り科学は存在すると思っています。
Iよく最近の若い大たちは、自分の身のまわりにおこっていることに対して、非常に好奇心が薄くなっているということが言われていますけれども、そうやって、だんだん知ろうとする欲求が減ってくるということは、脳にとっては退化ということですか。
利根川そうですね。
いまもお話しましたように、脳というのは潜在的に、わからないことを知りたいという欲求をもっているんです。
だから好奇心が薄くなっているとしたら、私は教育の影響が大きいと思います。
べつに若い人の遺伝子が悪くなってきているんじゃないでしょう。
知りたいという気持ちを刺激して、興味を抱かせるような社会的な環境が十分でないことが、若い人たちがたとえば科学に興味をしめさなくなっている原因だと思います。
実は、日本だけではなく、アメリカでもこういう問題はあるんです。
一般に若い世代は、科学離れしている傾向にありますね。
やはり教育の影響が大きいんでしょうか。
アメリカの場合ですと、一つは、みんなあまりにもお金もうけをしたがるという社会的な風潮があると思います。
だから科学者になるよりも、投資家になったり、ウォールストリートで就職したほうが、あるいは弁護士になったり医者になるほうが金がもうかる、そういう社会になっている。
これはどうも、アメリカだけでなくて、世界的にそういう傾向にあるらしい。
そういうことが理由で、科学に対する若い人たちの興味を刺激する環境が薄れていると思います。
興味や好奇心か脳を活性化させるI先ほど先生は、脳というものは、知らないことを知ろうとする本来的な性質をもっているとおっしゃったんですが、私はなんと四七歳という年齢で二まわりほども年の離れた人たちといっしょに音楽大学に入学しました。
ただ、自分で自分をほめてやりたいなと思うことは、音大に入ったことより、声楽を勉強するためにはどうしてもイタリア語をやらなければならないということで、この歳でまったく知らない新しい外国語の勉強に取り組んだことなんです。
最初の一年問は辞書を引いても、引いても覚えることができなくて、自分はこんなに能力がなかったのかと情けなかったんですが、がんばっているうちに二年生あたりからだんだんス。
と頭に入ってくるようになりまして、「ああ、私はいままで脳を使うことを怠けていたなあ。
けっこうさびついていたんだなあ」と気がついたんです。
こんな歳でもなんて、大先輩でいらっしゃる先生を前にして失礼なんですが、脳というものは、いままで使っていなかった部分でも、また使いはじめると、活性化するものなんてすね。
そうですね。
Iさんの場合は、先ほどからお話を聞いたり、送っていただいた著作やプロフィールを読んで、かなり特殊なケースだと思いました。
一般的には四〇歳を過ぎて新しい言語を修得するのは非常にむずかしいと思います。
人間というのは、みんな同じような能力や遺伝子をもっているんですが、それぞれの分野ごとの能力について、よくできる人とそれほどでもない人とがいるわけです。
I田さんは、もともとこの分野で非常に優れていたからこそできたんだと思いますけれどね。
私もずっとサイエンスをやってきましたが、実は四〇歳過ぎてから建築家になりたいと思ったことがあるんです。
けれども、Iさんのような勇気がなかったですね。
とてもむずかしいと思って、実際にはやりませんでした。
ただ、安藤忠雄という有名な建築家と知りあいになって、建築について話をすると、やはり非常におもしろいんです。
結局、おもしろいと思えるかどうかが重要で、興味があれば人間はかなりの能力が出せるのだと思います。
昨年に音大を卒業しまして、二度とあんなことはできないでしょうが、ほんとうに好きだからこそ、がんばれたのだと思います。
ところで、先生のご著書を拝読いたしますと、サイェンティストにとっては、たとえば記憶力のような頭のよさよりも、ひらめきとか創造力とかそういった能力のほうが大事なんだなという気がしますね。
私は、そう思っているんです。
私の友人で、いい科学者ではあるんだけれど、やはり私と同じで記憶力に自信のない人間がいるんです。
二人で酒を飲んで、われわれには直感があるからな、と言っておたがいに慰めあっていますけれども(笑)。
確かに科学の世界というのはご記憶力が非常によくていわゆる学業成績がト″プで大秀才であれば、優秀な科学者になれるかと言えば、私の観察ではかならずしもそうではないですね。
もちろん、ある程度はできないとだめですけれどね。
その後は、また別の能力が必要だと思います。
これはなかなか学問的に解析できないわけで、それこそ直感で言っているんですが、たとえばわれわれの分野では、セオリーを導き出すだけではなくて、力仕事で実験をやるわけです。
実験というのは、ほんとうに何週間も何力月もかかる力仕事なんですよ。
そして、一〇回に九回くらいは思ったとおりにいかないです。
今日六ヵ月かけてやった実験がうまくいかなかったとなったときに、幾晩寝ればそのショックから立ち直れるかという能力も切実に大切なんです。
つまりいわば楽観的な人のほうが向いているということなんですか。
私はいつも言うんだけれど、科学者になるための重要な条件の一つは、楽観的であるということです。
がんばって研究していれば、いつかは大きな発見ができるぞと思い込んで、自分の心理をコントロールできるっていうことは非常に重装で、これは受験で成績がいいという能力とはあまり関係がないんですね。
たとえば、ある仮説をお立てになりますよね。
その仮説を証明するために、何年か費やしてしまう。
そしてその結果、実は自分の仮説は誤りであったとわかった。
そういうときに、また1からやり直そうという楽観性ですね。
もちろん、それがずっと失敗ではこれもだめなんだけれど(笑)。
それはもう能力の問題ですか。
利根川それはセンスの良し悪しですね。
一〇年に一度は仮説が当たらないと、いい科学者にはなれない。
すべての学問は脳科学に吸収されるかI私は音楽を四〇歳代で専門的にはじめまして、実は非常におもしろかったことがあるんです。


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